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第2章 食糧問題を引き起こす原因
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2−4.食糧問題の2つの問題とそのデータ検証 |
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さて、第2章のここまでの説明で、2ヵ所にアンダーラインがひいてありました。 ひとつめは、ページ2−1で、「世界穀物総量は、世界総人口分の穀物消費量を上回っているのに、多くの人が食糧不足で命を失っています。そこには、食糧の「分配」の問題があります。」というところ。 ふたつめは、ページ2−2で、「このまま世界総人口が増加を続けたら、将来、いつの日か、穀物生産量が穀物消費量に追いついていくことができなくなり、世界穀物総量が世界総人口の穀物消費量を下回り、穀物価格は上昇し、食糧不足の苦しみが世界中に広がるでしょう。」というところです。 つまり、食糧問題には、現在における「分配の問題」と、世界全体では現在、問題となっていないが、将来に問題化するリスクのある「生産と消費のバランスの問題」という、2つの問題があるのです。 |
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では、この2つの問題を、実際のデータで検証してみましょう。 下の【表2】の黒い文字の部分は、米国農務省(USDA)のホームページの"Economic Research Service"[※2a]にある"Agricultural Outlook: Statistical Indicators"のTable23"World Supply & Utilization of Major Crops, Livestock, & Products"から転記したもので、2000年以降の世界全体での小麦、コースグレーンおよびコメの生産量、消費量および備蓄量を表しています。(2009年時点でのデータです。)コースグレーンとは、トウモロコシ、ソルガム、オオムギ、ライムギその他の雑穀類の総称です。小麦、コースグレーン、コメの数値を足した、穀物合計の生産量、消費量および備蓄量も表示しています。 その下に、世界穀物総量を表示しました。ページ2−1で、「世界全体での前年における穀物の備蓄量にその年の生産量を加えた合計」を「世界穀物総量」と定義しましたから、たとえば、2008年の穀物総量は、2007年における穀物の備蓄量3億6200万トンにその年の生産量22億2700万トンを加えた合計の25億8900万トンになります。 その下には、国連人口基金(UNFPA)の世界人口白書[※2b]から、世界総人口を転記しました。 さらにその下に、「世界総人口分の穀物最低消費量」という項目名で、「少なくともこれだけの量の穀物がないと、世界総人口が1年間、食べていけない」という理論上の穀物消費量を2パターンで記載しました。 パターン1は、世界総人口が1年間、毎日3食、ごはん1膳分のコメまたはこれと同量の穀物を食べるケースです。ごはん1膳分のコメは、約67gです。1年分は、67×3×365÷1000≒73kgとなります。世界総人口に73をかけて、単位を百万トンにしたものが、パターン1の世界総人口分の穀物最低消費量です。ただしこれは、穀物が飼料として一切使われないという、非常に厳しい状況を想定したものです。 一方、パターン2は、世界総人口が1年間、毎日3食、ごはん1膳分のコメまたはこれと同量の穀物に加え、最近の日本人平均の半分くらいの牛肉(年間6kg)とトリ肉(年間5kg)を食べるケースです。牛肉1kgの生産には年間11kgの飼料、トリ肉1kgの生産には年間4kgの飼料が必要だといわれています。パターン2での一人あたり年間穀物最低消費量は、家畜を経由する間接的な消費も含めて、73+6×11+5×4≒160kgです。世界総人口に160をかけて、単位を百万トンにしたものが、パターン2の世界総人口分の穀物最低消費量です。 さて、世界穀物総量と世界総人口分の穀物最低消費量を比較すると、どうでしょうか? ※2a:http://www.ers.usda.gov/Publications/AgOutlook/AOTables/ ※2b:http://www.unfpa.or.jp/publications/swop/swop2008/swop08.html |
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【表2】世界穀物総量と世界総人口分の穀物最低消費量の比較
| (単位:百万トン) | 2000 | 2001 | 2002 | 2003 | 2004 | 2005 | 2006 | 2007 | 2008 | 2009 |
| 小麦 | ||||||||||
| 生産量 | 583 | 583 | 568 | 554 | 626 | 620 | 596 | 611 | 682 | 659 |
| 消費量 | 585 | 587 | 604 | 589 | 607 | 623 | 615 | 616 | 635 | 645 |
| 備蓄量 | 207 | 203 | 167 | 131 | 150 | 147 | 127 | 122 | 170 | 184 |
| コースグレーン | ||||||||||
| 生産量 | 863 | 895 | 875 | 916 | 1015 | 979 | 986 | 1077 | 1100 | 1092 |
| 消費量 | 885 | 907 | 903 | 945 | 978 | 993 | 1012 | 1056 | 1073 | 1097 |
| 備蓄量 | 211 | 199 | 171 | 142 | 179 | 165 | 139 | 160 | 187 | 182 |
| コメ | ||||||||||
| 生産量 | 400 | 400 | 379 | 393 | 402 | 418 | 421 | 433 | 445 | 434 |
| 消費量 | 396 | 414 | 409 | 415 | 409 | 416 | 422 | 428 | 436 | 438 |
| 備蓄量 | 147 | 133 | 103 | 81 | 73 | 76 | 75 | 80 | 89 | 84 |
| 穀物合計 | ||||||||||
| 生産量 | 1845 | 1878 | 1822 | 1862 | 2042 | 2017 | 2002 | 2122 | 2227 | 2184 |
| 消費量(C) | 1865 | 1909 |
1916 | 1948 | 1994 | 2031 | 2049 | 2101 | 2145 | 2180 |
| 備蓄量 | 565 | 535 | 440 | 354 | 402 | 388 | 341 | 362 | 445 | 449 |
| 世界穀物総量(A) | 2443 | 2357 | 2302 | 2396 | 2419 | 2390 | 2463 | 2589 | 2629 | |
| 世界総人口(百万人) | 6134 | 6211 | 6302 | 6378 | 6465 | 6540 | 6616 | 6750 | ||
| 世界総人口分の穀物最低消費量 | ||||||||||
| パターン1(単位:百万トン) | ||||||||||
| 世界総人口×73キログラム | 448 | 453 | 460 | 466 | 472 | 477 | 483 | 493 | ||
| パターン2(単位:百万トン) | ||||||||||
| 世界総人口×160キログラム(B) |
981 | 994 | 1008 | 1020 | 1034 | 1046 | 1059 | 1080 | ||
上の【表2】から、世界穀物総量(A)は、パターン2の世界総人口分の穀物最低消費量(B)の2倍以上の量であることがわかります。つまり、「世界穀物総量は、世界総人口分の穀物消費量を上回っているのに、多くの人が食糧不足で命を失っている。」というのは事実であり、食糧問題の1つめの問題である食糧の「分配」の問題は、実際におきていることなのです。 |
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| では、食糧問題の2つめの問題、「生産と消費のバランスの問題」についてはどうでしょうか。 上の表を見ると、世界総人口は、毎年7000万人以上のペースで増加していますが、世界穀物総量も増加しているため、世界穀物総量(A)と世界総人口分の穀物最低消費量(B)のバランスは、余裕をもった状態で保たれています。また、世界穀物総量(A)と世界総人口分の実際の穀物消費量(C)のバランスも、余裕をもった状態で保たれており、現時点では問題はないように見えます。 しかし、作付面積の拡大や穀物の生産集約化に限界がある中で、いつまでこのバランスを保つことができるのでしょうか。国連人口基金(UNFPA)は、2050年には世界総人口が約92億人に達すると予測しています(→Note p1)。92億人分の穀物最低消費量は、パターン2で14億7200万トンです。これは、2009年の世界穀物総量26億2900万トンでもカバーできる量ではありますが、実際には人々は、豚肉や卵も食べ、牛乳も飲むので、92億人分の実際の穀物消費量は、パターン2の穀物最低消費量よりもずっと多くなるでしょう。FAOは、2050年の穀物消費量が30億トンに達すると予測しています。世界穀物総量も同じくらい増加しないと、需要と供給のバランスが崩れ、穀物価格が高騰し、さらに多くの人が食糧不足に苦しむことになります。 食糧問題の2つめの問題は、現時点では現実化してはいませんが、このまま何も改善されずに進んだ場合には、将来、現実化する可能性は十分あると言わざるをえません。 |
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