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4−3.先進国におけるリスク

   
 
(1)食糧問題への関心の低さ

 2009年の時点で、先進国では、食糧不足は開発途上国だけの問題であり、先進国には関係ないと思っている人が多いように思います。第3章で学んだように、国連、WFP、各国政府、民間企業など、多くの人たちが食糧問題の改善のために働いているけれど、先進国では、食糧問題が社会全体の問題として扱われていないように感じます。理由は明白です。自分たちが困っていないからです。

 自分たちが困っていないから、他人事だから、あまり問題にしないというのは、まるでクラスで誰かがイジメられてても、自分に害はないから知らんぷりするみたいで、いい気はしません。ただその前に、
そもそも自分たちは、本当に困らないのでしょうか?
 
   
     
 
(2)食糧不足が先進国にも広がるリスクについて

 第2章では、食糧問題の2つめの問題として、
「このまま世界総人口が増加を続けたら、将来、世界穀物総量が世界総人口の穀物消費量を下回り、穀物価格は上昇し、食糧不足の苦しみが世界中に広がる」というリスクがあることを説明しました。

 もちろん、将来のことは誰にもわかりません。農業政策の転換や農業技術の進歩により、たとえ世界総人口が92億人に増えても、その需要をみたすに足りる食糧を生産できるかもしれません。しかし、食糧問題の2つめの問題が現実化する「可能性」は、たしかにあるのです。

 
 
     
 
(3)2008年の食糧危機

 2006−7年のオーストラリアでの干ばつ、中国等の食糧需要増大、バイオ・エタノールの生産拡大、金融危機による投資マネーの穀物市場への流入等により、2008年に穀物価格は高騰し、コメ、小麦、大豆、トウモロコシのすべての価格が過去最高値を記録しました。

 この穀物価格高騰により、世界各地でデモや暴動が発生し、日本でも飼料の値上がりが畜産業に打撃をあたえました。

 
 
     
 【図7】食糧価格高騰に起因して発生した暴動等(ODA白書から引用)   
     
     
 
(4)世界の穀物備蓄

 下の【表3】は、第2章のページ2−4で、USDAとUNFPAのデータから作成した、【表2】「世界穀物総量と世界総人口分の穀物最低消費量の比較」の一部です。

 
世界の穀物備蓄量(D)と、パターン1、世界総人口が1年間、毎日3食、ごはん1膳分のコメまたはこれと同量の穀物を食べるケースの世界総人口分の穀物最低消費量(E)とを比べてみてください。2002年以降、世界の穀物備蓄量(D)は、パターン1の世界総人口分の穀物最低消費量(E)を下回っています。

 必要以上にリスクを誇張し、社会不安をあおることはしてはならない行為ですが、このデータからいえることは、地球規模の急激な気候変動等により、世界全体の穀物生産がゼロになったら、世界の穀物備蓄量は1年もつかどうかぐらいしかないということです。
 

 僕らが現在、生きている世界が、いかに脆いかを痛感せざるを得ません。


   
     

【表3】世界穀物総量と世界総人口分の穀物最低消費量の比較(一部)

 (単位:百万トン)  2000  2001  2002  2003  2004 2005 2006 2007 2008 2009
 穀物合計                    
  生産量 1845 1878  1822 1862 2042 2017 2002 2122 2227 2184
  消費量(C) 1865 1909
1916   1948 1994 2031 2049 2101 2145 2180
  備蓄量(D)  565  535  440  354  402 388  341  362  445  449
                     
世界穀物総量(A)    2443  2357  2302 2396 2419  2390  2463 2589  2629
                     
世界総人口(百万人)    6134 6211   6302  6378 6465  6540  6616  6750  
                     
世界総人口分の穀物最低消費量                    
 パターン1(単位:百万トン)                    
 世界総人口×73キログラム(E)    448  453  460  466  472  477  483  493  
                   
  パターン2(単位:百万トン)                    
  世界総人口×160キログラム(B)
   981  994  1008  1020 1034  1046  1059  1080  
                     


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